Day 81 PGF画像 埼玉県警児ポルチーム栄光の軌跡 1
ブチョー
「ちょうど、この部屋だ。うん、この調べ室だった。」
なにが理由か知らないが、取調べは特別なことがない限り毎回同じ取調室を使用する。
特別なこととは、例えば不自然に大きな鏡のある取調室の使用をはじめ、他にも色々とある。
私は通算で3回ほど別の取調室に通されたが、99%は同じ取調室だった。
まったくの偶然だそうだが、PGF画像撮影者N氏の取調べは、
スタービーチ援交の取調べか行われているこの部屋で行われていた、とブチョーは言った。
その捜査はもちろん、ニッポンが世界に誇る、埼玉県警児ポルチーム(当時はそんな呼び方はされていなかったと思う)が行っていて、その飯場がたまたま川越署だったということだ。
「あの時、オレは川越署の一捜査員だった。」
今のメタボの役割、
つまり、被疑者を留置管理課事務所大扉から取調室まで(それも10mに満たないわずかな距離だぞ)
連行し、必要に応じてタバコや飲み物を用意する業務、を当時のブチョーがやっていたそうだ。
「奴のクルマの引き揚げは、オレがやった。白い革張りシートのジャガーなんか乗ってやがってよ。
あまりの乗り心地の良さに、オレもハメ撮りされちゃおうかな、とか思っちゃったよ。(笑)」
クルマというモノは、いつの時代もオンナをおとす重要なアイテムの1つであるらしい。
だが、クルマだけが武器ではないはず、オンナを裸にさせるのはジャガーではない。
「顔か? 三宅裕司みたいだったぞ。服は高そうなの着てたけどな。」
三宅裕司氏には大変申し訳ないが、私はN氏に対し、急に親近感を抱いてしまった。
当時、N氏は勤務先都内某支店の支店長をしながら、ハメ撮りを敢行していたという。
真面目に働きながらのハメ撮りは、関西援交主犯Y氏と同じだ。
「奴は、ストレートのロングヘアの子が好みでな、そんな子にかたっぱしから声かけちゃ、
ハメ撮りしてたらしいよ。」
言うのは簡単だが、そうそう上手くいくものではない。
カネの有効活用以外のなにかがあったのではないだろうか。
「確かに、仕事柄、話術に長けた男だった。・・・自分が昼メシ食いに行く定食屋の店員まで
ハメ撮りしてたくらいだからな。番長もsithも、そこまではデキないだろ?」
・・・デキない。
レベルが違う。
「あの案件はタナボタだったんだよな・・・」
PGF画像は、ハメ撮り屋、画像データをアップする技術屋、
そして、それを売りさばく販売屋の3人による、完全分業制で構成されていたという。
その発覚は、よくある内部告発ではなく、
まったくの別件捜査における技術屋の身柄拘束が始まりだったらしい。
「ハメ撮り屋のNくんは、罪になると思ってなかったようだよ。」
当時はまだデジタルカメラの普及していない時代。
銀塩フィルムにより撮影されたわいせつ画像は、
技術屋の手によりデジタル化され、販売屋を経由し、
フロッピーディスクとして顧客のもとへ届けられた。
販売と比較すると、撮影や素材提供はどうしても罪悪感が薄れる。
画像を渡しただけならセーフと彼が考えたとしても不思議ではない気がする。
「今みたいに、DVDなんかない時代だからよ。
フロッピーディスク50枚とかで取り引きされてたんだぜ。」
当時の不便さは販売だけにとどまらない。特に銀塩フィルム使用による弊害は想像するにあまりある。
その第一は、なんと言ってもフィルムチェンジだ。
「まず、ガーっと激しく腰動かして、ピタっととめてシャッター切って、またガーっと、
を繰り返していたそうだよ。」
「フィルムチェンジはどうしていたんですかね?カメラを何台も用意してカメラごと交換ですか?」
「ハメたまま交換してたらしいぞ。器用な奴だからよ。」
繰り返すが、デジタルカメラ普及前のハナシである。経験者でないとピンとこないだろうが、
銀塩フィルムの交換には、それなりの注意が必要なのだ。
また、その間の勃起力の維持も軽視できん。
撮影とはまた別の才能が・・・
「鏡撮り、って知ってるか? ハメたまま鏡に映る姿を撮るやつ。それもアイツがあみ出したワザだ。」
画像を見かけた記憶はある、が、今ではハメ撮りとしてよく目にする、ごく普通の絵づらだ。
「アレ、簡単そうに見えるけど、ある角度からじゃないと、キレイに撮れないらしいぞ。
鏡撮りをするから、奴は大きな鏡のあるホテルしか使わない、んだってよ。」
ほう・・・
捕らえてみると、撮影者N氏の口座には3000万円を越える大金があった。ジャガーも加えると、犯罪収益はかなりの金額になる。
しかし、当時の法律ではそれを没収することができなかったらしい。
「そういうとき、オレらがどうするか教えてやろうか?通報するんだよ。」
税務署の職員がニコニコしながら、すぐやってきたらしい。
「盗品でも売却利益が出たら、税金を納めろ、ってのが、税務署の考え方らしいぞ。
結構持っていかれたんじゃないか。」
だが、全額没収と比べたら、随分とワリが良いではないか。
「その代わり、半年ここ(留置場)にブっこまれてたぞ。」
「判決はどうだったんです?」
「4年の5年だったな。」
懲役4年執行猶予5年とのことだが、これはブチョーの記憶違いだろう。
おそらく、懲役3年執行猶予5年だ。
うーむ・・・現在の量刑では考えられないほど軽い。
と言うより、その後、重くなったと認識すべきか。
「今でもよく憶えてるよ。裁判に奴の上司が情状証人として出廷してな、会社にとってどうしても必要な人材です、最後まで会社で面倒を見ますので、なんとか早く戻して下さい、って裁判官に頭下げて頼んだんだよ。あれには驚いた。」
それが効いたかどうかはわからない。
しかし、上司にそこまで言わせた事実だけでも、この男ただ者ではない。
なんだかんだ言っても、全額ではないにせよ、カネは残ったし、とにかく下獄はまぬがれた。
勝ち負けで表すなら、負けではない。
「それはどうかな?」
事件は大きく報道され、最も小さな家族が最も大きな被害を受けたらしい。
得たものもあったが、失ったものもあった。
「判決後しばらくして、あいさつに来てさ、税務署の方は、ある程度経費を認めてもらって、
負けてもらった、って言ってた。もう同棲してる、とも言ってたな。
公私ともに手の早い奴なんだよ。・・・いや、早いだけじゃないな。
こう言っちゃ悪いが、sithや番長とはレベルの違う女の子ばかりハメ撮りしてたぞ、Nくんは。」
そういう挑戦的な言い方をされたら、誰だって面白くはない。
「見せてやろうか?」
そう言って席を立ったブチョーは、大きな封筒を手に戻ってきた。中から出てきたのは、
写真レベルでカラー印刷された無修正のわいせつ画像。デジタル保存の現在と異なり、
当時はこのような形で保存していたようだ。
確かに私の被写体よりワンランク上だ。
だが、私の目はオンナではなく、オトコの方に釘づけになった。
一目見て、確信した。
独特のアングル、特徴ある体毛、入室から終了までの一連の流れ、そして、極めつけは、
カメラに向かって手を振る〆の1枚。
「この人、xxxxの撮影者ですよね?」
「お前、よく知ってんなぁ。」
ブチョーによると、素人ハメ撮りをウリにしている主要サイトは、
大元をたどると4名の男に行きつく、らしい。
「アイツもいろいろと学んだんだろうな。結構稼いでいるみたいだぞ。」
やはり特別な才能の持ち主だ。